「御島さんは、なんで創っていられるんですか?」
「…………」
「辛くないんですか? 苦しくないんですか? もし一生懸命頑張っても追いつけない人がいて、もしどんなに頑張っても創れないものがあるんだったら、それでも創る意味って何なんですか? いくらやっても辛いだけじゃないですか。創っても創っても痛いだけじゃないですか。それともこんな気持ち、御島さんは感じないんですか? 御島さんは天才だから、御島さんは何でも創れるから、追いつけなくて創れない人の気持ちなんて微塵も感じたことがないんですか?」
言葉が堰を切って溢れる。
「僕は……僕はできない。パンドラの人達には絶対に追いつけないから。いくらやっても無理だって解ってしまったから。もう続けられない。もう無理なんです。これから一生こんな気持ちのままで、何にもなれないままずっと創り続けるなんて……できない……辛いじゃないですか……そんなの、辛過ぎるじゃないですか……」
僕は全てを吐き出した。吐露できた。だからもう充分だ。
答えは要らない。
だってきっと御島さんには僕の気持ちは解らない。先頭で創り続ける御島さんに、後続の気持ちなんて理解できるわけがないのだ。(p.83)
数多くんの心の底から絞り出すようなセリフが良いですね……
◇
〝創るのをやめるより辛いことなんて、この世には無いの〟
〝だから私達は創らずにはいられない〟
創作とは何か?
昨深夜、睡魔と戦いながら「2」を読み切りました。
(祝)六部作無事完走。なぜか半年もかかっているのは内緒。
以下全力でネタバレしているので色々と注意。
本の感想でもレビューでもなく、ガチでただのチラ裏覚え書きです。覚え書きなんです(二回目)
◇ 感想
終盤の展開が全部予想通りすぎて、びっくりするほどびっくりできないことに逆にびっくりした(びっくり)
なぜならあのシリーズキャラ総出演の流れで二見くんと理桜が出てこないわけがないし、最原最早が生首になった時点でまだ不死の女が登場していないじゃない〜どうせ人格のバックアップとってあるんでしょ〜??(なによりそんなラストがあってたまるか!!)と思っていたので……
なんつっても[映]アムリタの正当未来(っぽい世界)なのに二見遭一が登場しないわけないじゃないですか。 真顔
とまあ、そんな感じでほとんど予想通りの終盤でした。
プロローグが凄絶で普通にめちゃくちゃ面白かったので、どうせなら最後まで予測不可能、回避も不可能の超ど級ジェットコースター展開で読者をブンブン振り回してほしかった…… みたいな気持ちもある。
あとそれ↑とは全然関係ないんですけど、野崎まどの「なんでもあり」具合が自分はあまり肌に合わないのだろうなぁ、とシリーズ通じて感じたりした。かな。
決して悪い作品ではないんですけど……
◇ わけわかんなくなってきたので話の流れを整理
0.1
<2月1日>
超劇団パンドラのオーディションで数多一人が阿部足馬、振動槍子と出会う
その後不出三機彦、御島鋳と対面
コンビニ「夜の蝶」で店長と話す
↓
新人公演の二回目の練習、その後親睦会兼打ち入りが行われる
↓
<3月中旬>
パンドラの新作の初稽古が行われ、新入団員が見学する
↓
翌日、桜鳥以下八人の新人が退団する
↓
サンロードの本屋で御島鋳と遭遇、その後スタバへ行き御島に「なぜ創作するのか?」を問う
↓
さらに森以下五人の新人が退団する
↓
<5月上旬>
パンドラの新人公演が行われる
↓
<5月中旬>
新人公演から一週間後
最原最早と出会う
劇団パンドラが解散する
↓
0.2
<5月下旬>
入団審査から一週間後、最原最早と再会
「夜の蝶」で店長と話す
↓
0.3
最原最早と再会した翌日。
楠井リサーチサービスの事務所で舞面真面、舞面みさきと接触、映画への出資を依頼し了承を得る
↓
さらに翌日、舞面真面から三億円が振り込まれる
↓
0.4
<5月25日>
「 鈴木友子 在原露と接触、紫依代への取り次ぎを依頼し了承を得る
↓
翌日、阿部足馬から連絡を受け喫茶店で再会
(この時点でパンドラ解散から二週間が経過)
御島鋳を「エリシオン」で見たと聞かされる
↓
0.5
<6月1日>
「世界一の作家」紫依代と接触、シナリオの執筆を依頼し了承を得る
紫依代はこの日以降泊まり込みで執筆を始める
↓
最原最早から映画のタイトルを教えてもらう
↓
ややや、柊子を「夜の蝶」で見かける
舞面真面と接触、最原最早の情報提供を依頼される
その際彼に映画のタイトルを教える
↓
0.6
二見の元バイト先であるレンタルビデオ店「映画館」でナタリー・リルリ・クランペラと接触、映画の出演を依頼し了承を得る
その際、役者「二見遭一」と最早の娘の存在を知る
↓
<6月下旬>
最原最早と紫依代と創作についての話をする
↓
<6月28日>
エレベーターで最原最中らしき人物(正体は理桜)を見かける
紫依代がシナリオを脱稿、事務所から離脱する
数多一人が「2」のシナリオを読み始める
↓
<6月30日>
「2」の絵コンテが完成し、制作準備が整う
数多一人がシナリオ読みを止められる
↓
0.7
<7月中旬>
舞面真面と接触
↓
「2」がクランクインする
↓
<8月中旬>
「2」の撮影が進む
ナタリーとの演技力の差に打ちのめされる
↓
役者の勉強という名目で、藤凰学院の生物教師・伊藤と接触、特別講義を受ける
その際に最原最早の名前を伝える
↓
0.8
<8月下旬>
藤凰学院の王母図書館で名色量子と接触、最原最早の過去作の話を聞く
↓
0.9
<9月25日>
最原最早と深夜、散歩をする
↓
<10月9日>
「2」がクランクアップを迎える
↓
<10月中旬>
舞面真面と接触、初号試写の日程を11月10日に仮決めする
直後、舞面真面が0号試写の実施を提案する
↓
1
<11月1日>
舞面真面、舞面みさきと合流、「吉祥寺イデア」にて0号試写を行う
最原最中だと思われていた少女の正体が、最中の友人の理桜だと判明する
同時刻、「吉祥寺シアターパルス」で本物の最原最中が映画「2」を観終わる
↓
2
<11月中旬>
舞面真面と接触
二見遭一 =数多一人が登場
(この時点で彼は最原最中を十日以上匿っている)
↓
3
二見遭一と最原最中が、劇場「エリシオン」で最原最早の役を演じていた不死の女、最原最後(最原最早の息子=パンドラの最終オーディションに来ていた子役)、御島鋳=最原最早本人と再会し、新作のキャストの準備が整う
<The end>&<to be continued…>
◇ 本作のよかった点
・冒頭100頁、壮絶なプロローグに惹き込まれる
・振動さんと阿部さんのキャラクターが実に好み
・情け容赦のないキャラの使い捨てっぷり
・シリーズメインキャラ総出演で楽しい(伊藤先生や舞面真面ら主人公組とのクロスオーバー感が特に良い)
・過去にない分厚さで読み応えがある(ちょうどこれくらいの尺と密度で読みたかった)
・それでいて相変わらずサクサクと読みやすい文章
・「創作」とは? 「人を愛する」とは? というテーマが非常に興味深い
・伊藤先生が教えてくれる生物の進化論の薀蓄が楽しい(こういうの好き)
・舞面真面の只者じゃない感が好み
・ラスト一文の心地良さ(元々ここに着地してほしいと思っていたので大変満足)
・六部作を読み切ったことに対する満足感、達成感、感慨深さ
などが挙げられるので、まあ概ね読んでよかったかなぁ、という感想。
なによりシリーズ完走したという達成感が気持ちいいんだよな(何度でも言う)
ところで物実さん(*「小説家の作り方」の主人公)だけ本文中で見つけられなかったのだが、、、かなC
それと最後くんは最原最早が19歳か18歳の時にできた子ってことにならない? 計算的に。
(「歳が上なだけあって精神が成熟している」的なことが書かれてあるから少なくとも双子ではないかと)
結構早い段階で子ども産んだんだな最原さん……
表紙は圧倒的に旧装版の方が好みなので、いずれこの話もどこかでしたい。
今回わたしが購入したのも旧装版ですぞ。
あ。[映]アムリタの読書記録、置いときます(自分用)
次の撮影がすぐに始まる。
僕たちは次の映画を作るだろう。
その映画はどんなものなのか。
今の僕にはまだわからない。
でも、一つだけわかる。
その映画はきっと、とても面白いのだ。
(p.558)