プラトニックラブの最高峰。
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「どうも私たちのまわりは。」私の口をついて出たのはそんな言葉だった。「いつも死でいっぱいね。私の両親、おじいちゃん、おばあちゃん…… 雄一を産んだお母さん、その上、えり子さんなんて、すごいね。宇宙広しといえどもこんな二人はいないわね。私たちが仲がいいのは偶然としたらすごいわね。……死ぬわ、死ぬわ。」
(p72)
三篇目「ムーンライト・シャドウ」はややありふれた印象であまりピンと来なかった*1けれど、表題作の「キッチン」、その続編に当たる「満月」はとても良かった。
中でも部屋と光の描写が強く記憶に残る。
柔らかな光と緑に溢れた清潔で広い部屋は本当に本当に素敵で、私も絶対にこんなところに住もう、植物で満たしてジャングルみたいにしよう、と心の底から思った。
屋外も悪くないけど、それ以上に情景が頭の中にくっきり浮かび上がる(くらいに詳細に描いてくれている)室内の描写が最高です。
そのほか空の描写と “青“ の空気もたくさん出てきて印象的。
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文庫版はジャスト200頁でかなり薄いです。
実家にハードカバーがあるのですが、文庫になると同じ内容なのにこんなに圧縮されるんだ!(サイズが)という純粋な驚きがありました。
いや、逆にハードカバーが必要以上に分厚すぎるのか?
よくわかりませんが。
電車の中とかお昼休みとか、やることなさすぎて暇すぎて死ぬ! みたいな時にサッと取り出して読めたのはよかったです。
*1:読書環境が最悪だったということも大きく関係する。あんな環境で読んでしまい、ばななさんに本当に申し訳なく思う。あの人を舐め腐った上にTPOを少しも弁えないクソオタ男は絶対に絶対にぜーーーったいに許さない。 ゲフンゲフン