この旅に意義など求めていない。
苦労など知ったことか。
行き先なんて考えたこともない。
(中略)
少女は、少年と一緒に居るために、旅を続けているのだ。
(p154-155)
露骨なエロ無し。記号的な萌えも無し。
全くあざとくない良質なジュブナイル・ロードノベル。
サバイバルキャンプの描写がいちいち丁寧で素敵だなぁ。
キャンパーの方、どうでしょうか?
少年と少女。二人は恋人ではないけれど、その距離は近く、想いは強いのです。
「必要とあらば」
「……ほう?」
男が笑みを浮かべる。先ほどまでのような嘲笑まじりの苦笑ではなく、興味を示す小さな笑み。
「僕はスーパーマンじゃないけど、この子のためとなれば、凶悪犯罪者ぐらいにはなる気でいるんでね」(p230-231)
↕
「それはないわよ。絶対」
(中略)
「あのね。知らないようだから言っておくわ」
ずん、と大きく足を広げ、少女が腕を組む。
「少年はね。私の物なの。んでもって私は、少年の物なの。だから、駆け落ちなんて絶対に有り得ないわ」(p292)
しっかり通じ合ってるじゃないですか。
いいなーいいなー互いに向ける信頼と尊敬がすごく良いな。
引用部分が長くなるからやらないけど、他にも二人の思考がシンクロしているところがいっぱいあるんですよ。
とか良いよねぇ……!!あぁ、でも第二章の少女のモノローグ、想いの強度が高くてめちゃくちゃ良いのでこれはもう実際に読んでみてほしいです。
◆
「あ……あの……」
少年に対しては何やら期待するような視線を向けつつ、言い淀んでいる。
その様子を見て、予想的中せり、と少年が意地悪な笑顔を向けた。
「期待してもらってるところ悪いけど、僕のタンデムには少女以外は乗せないことにしてるんだ。だから、君は前に乗るの」(p294)
ここもすき。
芯が強くていざという時の肝も据わっていて……シンプルにかっこいいんですよ、この子たち。
出会った大人たちがみんなたじろいでしまうのもわかるわ〜。
4/13追記:
口絵の話をするのをうっかり忘れていた。
口絵が本当素晴らしすぎるので見てください……
画像載せたくなるけど、ぶっちゃけそういうわけにもいかないので。
追記2:
主人公コンビにちょっとリリトレっぽさある。
この話も書こうと思って見事に忘れていた。合掌。