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お気楽お日記 ꜀( ꜆ᐢ. ̫.ᐢ)꜆

ギャングスタ読んだよ

な、懐かしい……!(第一声)

高校生の頃、同著者の「殺し合う家族」を読んでドン引きしているとき*1に隣に置いてあったのでパラパラ〜と読んだのでした。

そのときはあまりの雰囲気の違いに面食らってそっ閉じしたんですけど。

今でこそこんなん(ようすのおかしいラノベばかり読んでいる)だけど、当時はもうちょっと硬派というか、一般向け文庫棚でミステリやサスペンスやSFを中心に手に取っていたのよね〜〜〜。懐かしいわぁ。

とまあわたしの思い出語りはかなりどうでもよいので、サクッと感想に移ります。

個人的に今年読んだ中では絶深海2に並ぶ面白さだったなぁ。
とにかく先が気になって気になって仕方ない。

よく小説の描写を「映像的」と評したりするけれど、この作品は構成、展開、演出、描写の点で明確に連載漫画を意識していると思います。
(もしそうではなかったらスタイディング土下座。ごめんなさい)

長編小説というより単行本化された週刊連載の少年漫画を読んでいる感覚にとても近い。

章ではなく細かく節分けされているのだけれど、この「節」が漫画で言う「話」数に当たるのよね。
多少例外(第14節とか)はあれど、1節=1話と捉えてもらってほぼ問題ありません………… ないですよね?

序盤は1節ごとに新キャラクターが登場→喧嘩の流れを繰り返し、毎回誰かしら・何かしらの魅せ場が存在します。
そして最後には「どうなる次回!?」とでも言いたくなるような、次節への強烈な引きがある。
うわ〜!激しく続きが気になる〜!!
これはまさしく連載漫画のやり方でしょ。

そして主人公なんですけど、これがみんな大好きダブル主人公制。

まず第1節で川谷銀二(主人公)が白石リキ(銀二の相方にして、この作品のもう一人の主人公)と出会い、「もしや、こいつなら明王工業の四天王になれるんじゃないか?」という閃きを得る。

そんな銀二にしつこく誘われた力は(ギャングスタ? なにそれ? と思っている。そのうえ喧嘩に対する興味もプライドも無いので)そんなもん要らんわ〜とあっさり断るのだけど、その後なんやかんやあって(主に銀二が粘着質に付きまとったりして)、第2節のラストでは、ついに力が(理由はアレだけど)「四天王になってやろうじゃないか」と言い放つのです。

そして意気投合したと思った矢先の第3節で互いの解釈違いが発覚し呆気なくコケる。(※お約束)

第1節では銀二の運命の出会いと不思議な直観を描き、第2節では喧嘩にも同性の友人にも興味のなかった力が戦うだけの〝理由〟を見つける。

第1節が銀二にとってのスタートラインだとしたら、第2節は力のスタートラインなんですよね〜。

実際の連載漫画ならもうちょい間隔を空ける(3〜5話くらい?)のでしょうが、まあそこは小説ですしおすし。
尺もないし、何よりテンポが損なわれてストーリーの進行に中だるみが発生するので仕方ありません。

あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、ベタ。王道。最高。
王道とは良いものです

そもそも、初っ端のシーンが高校の入学式で、寝坊して絶賛遅刻中の主人公が母親に文句垂れながら校門まで猛ダッシュ、というのが素晴らしいのです。
もうベタすぎてちょっと恥ずかしいまである。最高。

そしてストーリー中盤。

各所で勢力がインフレを起こし始め、ラスボス級の強キャラが二人も参戦。序盤から存在を匂わされていた第一高専の三大王がそれぞれ動き出し、菅原文雄、次いでサクラザカ(通称。本名は福永雅弘)が退場、力と竜が手を組むと共に、力が喧嘩の魅力と自らの「本当にやりたかったこと」に少しだけ気づき始める…… など。
この辺りがいっちばん面白くて興奮したなぁ。

最初に倒した敵(竜)が中盤で仲間になるのも王道で良いですよね〜。

最終的に銀二を差し置いて二人で距離縮めちゃってんの、笑う。あるあるw

銀二も銀二でしれっと友達増えてたりする。
ゲーム(アーケード版ストファイ)でモヒカンを殴って偉そうにしている銀二と、彼に(ゲームで)殴られつつそれでもあほな信念を貫き通そうとするモヒカンたちが微笑ましくてよかった。
ちゃっかり仲良くなりやがって〜 も〜。

力が銀二に対していつの間にか名前呼びになっているところもグッときた。呼びタメ(・∀・)イイネ!

まあそんな感じで全体的にベタというか王道系で非常に楽しいのですが、唯一にして最大の問題は主人公の銀二が最後まで誰かの腰巾着のままで、一度も喧嘩に勝たないことなんですよね。

いや〝腰巾着〟は言い過ぎだし、主人公らしい格好いいシーンは5〜6個ある(結構あるな……?)のですが、「銀二が喧嘩に参戦するシーン」に関しては明らかに0です。
えっと…… 正直どうなん? これ??

いや銀二はわたし的に理想の主人公でしたけどね。
メンタルと能力が限りなくパンピーに近い、自分の保身のために逃げたり嘘ついたり狡したりする主人公は大大大好きですよ。
共感も応援もしやすいし、何より「ここぞ!」という場面で感じるカタルシスが半端ない。
モブっぽい、あるいは小物っぽい弱キャラクターが、ピンチの場面で勇気を振り絞って立ち向かう姿はあらゆる人間の心を打つのです。

というわけで、どうせなら力VS赤星で起こる〝奇跡〟はルシファーではなく銀二であって欲しかったんだよなぁ。
二人(いや竜も併せて三人か?)の力で掴み取ったギャングスタ、とかめちゃくちゃ格好いいじゃない(どうしてそうならなかった)
最後の最後だけでいいから漢気見せてほしかったよ銀ちゃん…………
なんで主人公の仕事が人質になることと救急車呼ぶことだけなんだよ銀ちゃん…………

それと、なぜラスボス級の奴らの喧嘩の手法は揃いも揃って目潰しなんだ。最低かよ。
「容赦の無さ」という意味では合っているのかもしれないけれど。
でもそれをやって許される(いや許されないけど)のはどちらかと言うと仁義なきヤンキー菅原文雄でしょうよ。という。

まあぶっちゃけ、喧嘩相手の両手の指をペンチで一本残らずへし折るイカレポンチなら目潰しやっても違和感ないわな。
だってそれが菅原だもん。という。
いや許されないけど(2回目)

喧嘩強いんだったら普通にパワー・オア・テクニックの正攻法で相手を圧倒してやればいいじゃんね。
何か引っかかる。
もうちょっとストレートな強さでも良かったんじゃないかなぁ。
赤星新の登場時のイメージ「ラスボス級の最強キャラ(美形)」が、一気に「フィジカルの強いサイコパス程度にまで格下げされましたよ。わたしの中で。

ついでにエンディングにも結構不満があるのだけど、力がギャングスタになれたのはまあいいとして、いきなり時間が経過しているタイプのエピローグは一番苦手なんだよなぁ。
叙述トリックもので演出上の必要に迫られて…… とかならともかく、普通の小説でそれをされちゃあカタルシスも何もあったもんじゃないじゃんね?

むぅ。
後半、文句ばかり言ってしまった…… 反省してます、ごめんなさい。
でも中盤までが面白すぎたのでその反動で終盤の粗(というか個人的な不満点)が目についちゃった感じですかね。

最終的な銀二の活躍の少なさに加えて、単調過ぎるインフレに繰り返される敵の共喰い現象、ラスボスのアレさとお話全体の尻すぼみ感はどうしても気になりました(……あれ? 結構多いぞ??)
とはいえそれ以外はすごく楽しかったし面白かったです。
気軽に手軽にサクッと読めておすすめ!


*1:実際の事件をベースにしていると知ってさらに引いた。→北九州監禁殺人事件。